内科・循環器内科・消化器内科
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大腸

急性虫垂炎の診断と治療

◆ 急性虫垂炎とは

急性虫垂炎は、虫垂(ちゅうすい:盲腸の先端にある小さな袋状の器官)に細菌感染や閉塞が起こり、炎症を引き起こす急性腹症の代表的疾患です。
全年齢層で発症しますが、10〜30代の若年成人に多い傾向があります。
放置すると虫垂が壊死・穿孔し、汎発性腹膜炎や敗血症など重篤な合併症を引き起こす危険があるため、迅速な診断・治療が必要です。


◆ 診断

◎ 症状

典型的な症状は以下の通りです:

  • 右下腹部痛(マックバーニー点周囲)

  • 発熱

  • 悪心・嘔吐

  • 食欲不振

  • 圧痛・反跳痛・筋性防御

◎ 検査

  • 血液検査:白血球数(WBC)やCRPの上昇

  • 腹部超音波検査(エコー):虫垂の腫大、壁肥厚、周囲の脂肪織濃度上昇など

  • 腹部CT検査:診断精度が最も高く、特に非典型例や高齢者、肥満患者では有用


◆ 治療

◎ 保存的治療(抗菌薬療法)

軽症例や早期発見例、または手術リスクの高い患者さんでは、抗菌薬(ペニシリン系・セフェム系・カルバペネム系など)による保存的治療を行います。
最近では抗菌薬治療で改善するケースも報告されていますが、再発率が20〜30%程度あるため、慎重な経過観察が必要です。

◎ 手術治療

現在、腹腔鏡下虫垂切除術(ラパ虫垂切除)が標準治療です。
腹腔鏡手術は創部が小さく、術後疼痛や入院期間の短縮、社会復帰の早期化が期待できます。

● 手術適応

  • 中等症~重症例(穿孔・膿瘍形成を伴う例)

  • 保存的治療無効例

  • 再発例

  • 腹膜炎徴候が強い例

● 開腹術

腹腔鏡手術が困難な場合(強い癒着、重篤な腹膜炎)には開腹術が選択されます。


◆ 手術後の経過と管理

◎ 入院期間

通常は術後3〜5日程度で退院可能です。穿孔や膿瘍形成がある場合は入院期間が延びることがあります。

◎ 術後管理

  • 創部感染・腹腔内膿瘍などの合併症に注意

  • 術後約1週間は過度な運動を控える

  • 定期的な外来フォローアップ


◆ 急性虫垂炎は早期治療が鍵

虫垂炎は時間の経過とともに重症化する疾患です。


◆ 急性虫垂炎 抗菌薬治療レジメン

重症度分類想定病原菌推奨抗菌薬レジメン推奨投与期間
軽症(単純性虫垂炎)大腸菌、Bacteroides fragilis など- アンピシリン・スルバクタム(ABPC/SBT)
- セフメタゾール(CMZ)
- セフォペラゾン・スルバクタム(CPZ/SBT)
3~5日間(術後48時間以内に終了も可)
中等症(炎症強い/穿孔なし)同上- ピペラシリン・タゾバクタム(PIPC/TAZ)
- セフタジジム(CAZ)+メトロニダゾール(MNZ)
4~7日間
重症(穿孔性、膿瘍形成、汎発性腹膜炎)ESBL産生菌も考慮- メロペネム(MEPM)
- イミペネム・シラスタチン(IPM/CS)
- ピペラシリン・タゾバクタム(PIPC/TAZ)+MNZ
5~7日間
ペニシリンアレルギー時腸内細菌科、嫌気性菌- レボフロキサシン(LVFX)+メトロニダゾール(MNZ)
- セフトリアキソン(CTRX)+メトロニダゾール(MNZ)
状況による

◆ 補足ポイント

  • 抗菌薬のみ治療の場合
     非穿孔性虫垂炎では抗菌薬単独治療(保存的治療)を選択することがあるが、再発率は約20〜30%と報告されています。

  • 術後抗菌薬中止時期
     非穿孔例では術後48時間以内に抗菌薬を中止してよいとされています。
     穿孔例や腹膜炎合併例では感染所見が消失するまで継続。

  • ESBL産生菌対策
     地域耐性菌状況に応じて、初期からカルバペネム系を選択する場合あり。


◆ 代表的な商品名

一般名商品名投与方法
アンピシリン・スルバクタムユナシン®点滴静注
セフメタゾールセフメタゾン®点滴静注
ピペラシリン・タゾバクタムゾシン®点滴静注
メロペネムメロペン®点滴静注
レボフロキサシンクラビット®点滴静注 / 経口
メトロニダゾールフラジール®点滴静注 / 経口

「右下腹部の持続的な痛み」「発熱」「吐き気」などの症状がある場合、できるだけ早く医療機関を受診しましょう。