慢性腎臓病(CKD)とは、腎臓の働きが少しずつ低下していく病気です。
自覚症状がほとんどないまま進行することが多く、放っておくと人工透析や腎移植が必要になることもある重大な疾患です。
日本では成人の約8人に1人が慢性腎臓病を有するといわれ、糖尿病や高血圧、メタボリックシンドロームなどの生活習慣病との関係が深いことが知られています。
腎臓は背中の下あたりに左右1つずつある臓器で、以下のような重要な役割を担っています。
血液をろ過して老廃物や余分な水分を尿として排出
体内の水分・塩分・ミネラルのバランスを保つ
血圧を調整するホルモンを分泌
赤血球を作るホルモン(エリスロポエチン)を分泌
この働きが慢性的に低下すると、慢性腎臓病と診断されます。
慢性腎臓病の原因はさまざまですが、主なものは次の通りです。
糖尿病性腎症:糖尿病による腎臓の血管障害
高血圧性腎症:長年の高血圧で腎臓の血管に負担
慢性糸球体腎炎:腎臓のろ過装置である糸球体の炎症
加齢や動脈硬化:加齢や血管障害による腎機能低下
薬剤性腎障害:鎮痛薬(NSAIDs)や造影剤 健康食品などの影響
初期には症状がほとんどありません。進行すると次のような症状が現れます。
倦怠感、疲れやすい
むくみ(顔・手・足)
尿の泡立ち(たんぱく尿)
夜間の頻尿
食欲不振、吐き気
血圧の上昇
慢性腎臓病は、以下の検査で診断します。
尿検査:たんぱく尿や血尿の有無を確認
血液検査:血清クレアチニン値やeGFRで腎機能を評価
血圧測定:高血圧の有無をチェック
CT検査 腹部エコー検査:腎臓の大きさや形、血流を観察
慢性腎臓病は早期発見・早期治療が重要です。
原因疾患を治療し、腎機能の低下を遅らせます。
塩分・たんぱく質を控えた食事(食事療法)
血圧・血糖の管理
禁煙・節酒
定期的な尿・血液検査
慢性腎臓病では、腎臓の機能を守るために薬物療法が行われます。
腎臓の働きを直接回復させる薬はありませんが、進行を遅らせることが可能です。
血圧のコントロールは最も重要な治療です。
ACE阻害薬(エナラプリルなど)
ARB(ロサルタン、バルサルタンなど)
これらは腎臓の血管を守り、たんぱく尿を減らす効果があります。
必要に応じてカルシウム拮抗薬を併用します。
糖尿病性腎症では血糖コントロールが重要です。
SGLT2阻害薬(ダパグリフロジン、エンパグリフロジンなど):腎臓保護効果あり
GLP-1受容体作動薬(リラグルチド、セマグルチドなど):血糖と体重を改善
むくみや高血圧を改善します。
ループ利尿薬(フロセミドなど)
ただし、使いすぎると脱水や腎機能低下を悪化させることがあります。
腎機能低下で高リン血症や高カリウム血症になることがあります。
リン吸着薬(炭酸カルシウム、セベラマーなど)
カリウム吸着薬(ポリスチレンスルホン酸カルシウムなど)
腎臓で作られるホルモン(エリスロポエチン)が減るため、貧血が起こります。
エリスロポエチン製剤/HIF-PH阻害薬(エポエチン、ダルベポエチン、ロキサデュスタットなど)
定期的な血液検査でヘモグロビンを確認しながら調整します。
高尿酸血症や痛風を防ぐために使用します。
尿酸生成抑制薬(アロプリノール、フェブキソスタットなど)
尿酸排泄促進薬(ベンズブロマロンなど)
脂質異常症治療薬(スタチン):動脈硬化を防ぐ
腎機能が悪いと薬が体内に残りやすく、副作用が出やすくなります。
市販の鎮痛薬(NSAIDs)や一部の漢方薬にも腎臓に負担をかける成分があります。
自己判断で薬を中止したり新しい薬を使ったりしないことが大切です。
日常生活の中で次の点を意識することで予防につながります。
塩分を控えめにする(1日6g未満)
水分をこまめにとる(医師の指示の範囲で)
定期的な尿・血液検査を受ける
適度な運動と体重管理
風邪薬や鎮痛薬を長期間自己判断で使わない
慢性腎臓病は初期には自覚症状がほとんどない病気ですが、
放置すると腎不全に進行するおそれがあります。
糖尿病や高血圧のある方は特に注意が必要です。
悪くなると治療はなかなか困難です。なるべく早期に来ていただけると助かります。定期の健康診断での検尿 尿蛋白検査が重要です。
きただい医院では尿・血液検査による慢性腎臓病の早期診断と薬物療法・生活指導を行っています。
定期的な検査で腎臓を守りましょう。